学術的なブレークスルー

キャプトデイティブ(cd)の概念の導入によって,新しい高分子合成研究が始まり,高性能・高機能ポリマー,立体規則性リビングポリマー,ラセンポリマーなど従来を凌ぐ、あるいはこれまで存在しなかった物質が誕生した。

 


ラジカルは金属と本当に錯体をつくるの?

 

Grignard反応,共重合シーケンス制御,立体構造制御,開始剤の高速分解などの反応で金属が介在する場合,中間体として配位ラジカルの存在が仮定されてきた。1986年,cd化合物を用いたESR研究によって,初めてその存在を直接観測することに成功した。

 さらに,2000本に及ぶESR吸収線を詳細に解析し,配位に伴うラジカルの安定化,立体配座の変化によるツイスト構造の出現,反応における金属の役割を明らかにした。

生命の誕生は,宇宙? 海底火山? 

 

高分子の生成,中でもラセンポリマーがどのように生成するかは長年の疑問であった。2004年,天井温度付近で特定の立体配座モノマーのみが優先的に重合してラセンを形成することを見出した。 

 即ち,天井温度条件である希薄な低温 ( 宇宙 ?),高温高圧 (海底火山 ?) がラセン形成にとって好環境である。これだと,化学結合を組換えることなく,容易に生命の謎の一つ,キラリティを発現させることも可能となるが?

じゃじゃ馬馴らしは可能か?

 

ビニルポリマーの80%以上はラジカル重合反応で製造されている。しかし ラジカル種は高活性(じゃじゃ馬) なため速度制御が難しい。さらに,ラジカル中心は平面構造のため,立体規制するのはもっと難しい。

 リビング重合より遥かに難しいと云われてきた立体制御だが,ラセン研究の折に所謂 CCRP (Conformation Controlled Radical Polymerization) 立体制御法を発見し,その後,初めてポリマーの立体構造と分子量を任意に同時制御することにも成功した。